September 19, 2008

Prévision

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なくしたものを見つける方法。ハオリムシは殺生の輪廻からはずれた生き物。ハオリムシは、酸素と硫化水素をたべて生きる。酸素と硫化水素をもとめて、クジラの死骸を渡り歩く。クジラの死骸は海流に乗り、プランクトンとともに流れて、時折また浜辺へと戻ってくる。なくしたものを見つける方法。彼女は棺桶の中で、長いことぼーっとしていた。静寂に耳を澄ませたり、土の中のひんやりを楽しんだり、ゆっくりとした心臓の鼓動を感じたりしていた。時には、棺の中にどこからともなく入り込んできた蛆の群れを(蛆が体の中から自然に湧き出したなんて思えない。どこからかやってきたんだ、と彼女は思う)、ちょっと鬱陶しく思って身をよじったり、あきらめてなすがままに身をあずけたりしていた。なくしたものを見つける方法。「となりどおしに住んで、別々の暮らしをして、会いたいときのルールをつくろう、たとえば手紙をはさんで、会えたときには、お互いの失敗とか活躍とか感動したとかしないとか、そんな話をしよう」「そんなことできるわけないじゃない」と彼女は言った。「結局、やっぱり引っ張られるの、会いたくなって、会わずにいられなくなって

・・・時計の音がしたような気がする。それで我にかえる。

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「絵本を読んであげようね」と彼女は言った。「パイロットマックスは/ニンジンをたべる/何ヶ国語もつかえる/ちっちゃなウンチをする/地面をすくい取る・・・」(Nadja "Maxou Pilot")

Category: サジ(MSD-F6), アリツェあるいはアナイス(アナイス)